「どっちが自分に合うか」は思考停止。繰り上げ返済とNISAを「効用(U)」で正しく比較する方法

沿って | 2026年7月13日
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こんにちは、管理人の「こみや」です。

先日、インターネットであるマネー記事を読んでいて、非常に残念な気持ちになりました。
それは、ボーナス80万円の使い道を巡る、以下のような読者とファイナンシャルプランナー(FP)のQ&A形式の記事です。
Q:「ボーナス80万円」を“繰り上げ返済・NISA”どちらにすべきか夫婦で対立しています。「NISAはリターンが大きい」と思いますが、金利が「1%→2%」になれば“繰り上げ返済”が有利ですか?
A(記事の要約):
・金利が上がるほど「繰り上げ返済」の節約効果は大きくなる
・NISAは長期間運用するほど「複利の力」が働く
・どちらが有利か」より「どちらが自分たちに合うか」で話し合って判断しましょう

解説には、「変動金利が2%を超えれば繰り上げ返済の節約効果は約70万円、NISAなら年利8%で20年運用すれば利益が約293万円になる可能性がある。日銀は2026年6月に政策金利を1.0%へ引き上げており、金利上昇が怖いなら繰り上げ返済、長く運用できるならNISAです」といった内容がもっともらしく書かれていました。

……正直に申し上げて、何か腑に落ちない、表面的な回答だと思いませんか?
一見プロらしい回答に見えますが、ここには金融論として決定的な視点が欠けています。それは「リスク資産の効用(U)」の計算です。

期待リターンとローン金利を「直接比較」してはいけない
管理人が投資のバイブルとして尊敬する経済評論家の故・山崎元氏は、こうした比較を行う際、必ず金融資産の「効用(U)」という概念を用いていました。

多くの残念な記事は、NISAの「期待リターン(例えば年5〜8%)」と、住宅ローンの「金利(年0.95%〜)」をそのまま並べて、「リターンの方が大きいからNISAが有利」などと煽ります。しかし、これは「価格変動リスクのある不確実なリターン」と「確実に発生するローンの利息(確実なマイナス)」を同列に扱うという、致命的な間違いを犯しています。

リスク資産を評価するときは、リスクという名の「ペナルティ」を差し引いた、実質的な価値(=効用)に換算してから比較しなければ意味がありません。

金融工学(平均・分散アプローチ)において、運用資産に対する年率リターンを単位とした効用(U)は、以下の数式で計算されます。

U=R1/2Aσ2CU=R-1/2 Aσ^2-C

・R :期待リターン(%)
・A :リスク回避度(標準的には2〜4)
・σ :年率リスク=標準偏差(%)
・C :想定コスト(%)

この数式を使うことで、「リスク資産を、リスクのない『無リスク資産の利回り』として平らにならして評価する」ことが可能になります。

「効用(U)」で見た、現在のリアルな損得勘定
ちなみに、この記事を書いている現在の一般的な金利水準は、変動金利が年0.950%〜、固定金利(35年)が年4.320%〜といったところです。
対して、管理人自身の全金融資産のポートフォリオから算出した効用(U)は「0.96%」です。
(全世界株などのリスク資産を多く含んでいても、リスクペナルティを差し引いた実質的な満足度は年率1%未満の価値に落ち着く、ということです)
これらを比較してみましょう。

・NISA(リスク資産)の実質価値(効用 U): 約 0.96%
・住宅ローン金利(確実に減らせる損失): 変動 0.95%〜 / 固定 4.3%〜

こうして見ると一目瞭然です。変動金利の最下限でようやくトントン、固定金利や少しでも金利が上昇した局面(日銀が利上げを継続している現在のような局面)であれば、明らかに「繰り上げ返済」の方が合理的で有利になります。

「確実な損失(住宅ローン金利)を減らすことは、確実な資産運用である」

これが金融の鉄則です。

金融機関への「忖度」に惑わされないために
なぜ、世のFP記事は「どちらが自分たちに合うかで選ぼう」などとお茶を濁すのでしょうか。
それは、一部のFPに知識が不足していることもありますが、それ以上に「繰り上げ返済をされると金融機関(銀行)が儲からなくなるから」です。投資信託を買ってもらった方が、業界は潤います。

こうした「金融機関への忖度」が含まれたもっともらしい記事には、くれぐれも注意してください(この点についても、生前の山崎元氏は厳しく指摘されていました)。

自分のポートフォリオの「効用(U)」を知るには?
とはいえ、「自分の資産の効用(U)を計算するなんて難しそう……」と思われるかもしれません。

そこで最も簡単なのが、AI(生成AI)の活用です。

AIに以下のような条件を投げかければ、あっという間に具体的な数値をシミュレーションしてくれます。
・保有している(または検討中の)商品の期待リターン(%)
・その商品の年率リスク(%)
 → 先進国株式インデックス:19.25%、日本個別株式:35% ※参考値(管理人)
・信託報酬などのコスト(%)
・自身のリスク回避度(一般的な性格なら「3」前後でOK)

ちなみに、AIによる「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の年率リスク(%)は、約14%~18%でした。

ブログ読者のみなさんも、ネットの表面的な言葉に惑わされず、ぜひAIの手を借りて「数字の裏付け」がある rational(合理的)な投資判断を行っていきましょう。

【ご留意事項】
本記事は管理人の投資体験、および分析プロセスを共有するものであり、特定の投資商品や売買を勧誘・推奨するものではありません。実際の投資判断は、必ずご自身の責任において行われますようお願い申し上げます。

著者: こみや

1959年生まれ。雇用延長で働く、しがないサラリーマンを66歳で卒業。 これから人生後半・第4コーナーに突入です。

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